北極しろくま堂メールマガジン

【特集】European Babywearing Conference 2013 Report

ベビーウェアリング製品を販売するメーカーやベンダー、ベビーウェアリング愛好家が集うベビーウェアリングカンファレンス。
今年の開催地であるイギリスブリストルの会場の様子やヨーロッパのベビーウェアリング事情を店主園田がレポートします。 

2013年9月

European Babywearing Conference 2013  vol.1


これまでアメリカ国内だけで行われてきたベビーウェアリング・カンファレンスが初めてヨーロッパに飛びました。このカンファレンスは06年、アメリカのポートランドで第1回目が開催され、その後は2年に1回のペースでアメリカ本土で開催が続いていました。
 開催のためには特に制約があるわけではなく、自主開催のようです。アメリカにはベビーウェアリング・インターナショナルという組織があり、インストラクターを養成するための教室などを行っています。修了したインストラクターが各地域に戻りそこでチャプターと呼ばれるベビーウェアリングの愛好会を地域で結成し、登録するようになっています。カンファレンスはそのチャプターの方々が開催を決め、実施してきました。


今回のイギリスもベビーウェアリングのインストラクターであるビクトリアが中心となって企画し、開催にこぎつけたようです。彼女はケンブリッジという学術都市に住んでいますが、カンファレンスができるような会場は3年先までいっぱいということと値段が高いという理由でブリストルという港町を選んだそうです。手弁当の会議なのでいかに開催費を抑えるかというのは重要な課題ですね。


カンファレンスに先立ち、ビクトリアのベビーウェアリング教室(インストラクター養成)も行われているというメールをもらい、視察させていただきました。実はベビーウェアリングという言葉の定義はまだはっきりしていません。Wearingという言葉の持つイメージからすると「(赤ちゃんを見に)まとう」というニュアンスが強いので北極しろくま堂では狭義の意味で捉えていますが、欧米のwearer(ウェアラー)達はベビーカーと素手以外で運ぶこと全てをベビーウェアリングとしているようです。だからかさばるリュック型の抱っこ紐もウェアリング、紐のようなちょい抱きするのもウェアリングなのです。ビクトリアの教室は3日間連続で開かれ、すべて抱っこ紐の使い方のスキルレッスンに費やされていました。私は最終日の視察だったので仕上げのロールプレイも見せていただきました。このような教室はヨーロッパでも盛んに行われており、一般のお母さん達が受講するスクールもあります。特にドイツでは医療者も含めたスクールが開催されていることもあり、ベビーウェアリングに対する親和性は日本よりも高いような印象を受けます。


もともと欧米では赤ちゃんを抱き続ける(holding-carrying)という文化自体がありません。移動はベビーカーで、愛情を伝えるのはHugで。添い寝もしないのが一般的だし、ましてやおんぶするなんて・・・! という意識が根強くありました。しかし愛着形成の視点や環境への意識の高まりから人間らしさを求めるようになったのでしょうか、90年代の終わり頃からいわゆるベビーウェアリングの商品が出回るようになっています。ドイツではラップタイプのデディモス社が有名ですが、この会社は70年代の創業です。


欧米人が日本人やアジア人、アフリカ人全般にみられるような抱っこをし続けないのは宗教的な文化が背景にあるという説もあります。(写真「ふろしきで読む日韓文化」イ・オリョン」)しかし、最近では出生直後から少なくとも
生後2~3カ月の間に人に触れあわないような育児をすると愛着形成に問題が生じることがわかってきています。そのために出産後のカンガルーケアをはじめ、日常的に抱くことが推奨されているというような変化が社会全体でみられるようになってきており、ヨーロッパも同様に取り組まれている面があります。
今回のカンファレンスではベビーウェアリングのスキルを学ぶワークショップの他に、医療者からカンガルーケアを含めた報告や親子のふれあいが子どもの愛着形成に及ぼす影響をテーマとした論文のレビューなどがありました。 

次回のSHIROKUMA mailではカンファレンスの一部内容や参加者とのやりとりから見えてきたベビーウェアリングについてのとらえ方・考え方などをご紹介します。


European Babywearing Conference 2013  vol.2


ヨーロッパで初めて開催されたベビーウェアリングカンファレンス。世界各地から集まったベビーウェアラーの話には大変興味深い内容のものもあったそうです。レポート第二弾、お楽しみください。 

ベビーウェアリングのカンファレンスに参加している、というといろいろな受け取られ方をします。カンファレンス(Conference)は「会議」などの意味があります。学会よりももう少しくだけたニュアンスもありますし、あるテーマやカテゴリーについてたくさんの人が集まってみんなで話し合ったり、個別にビジネスの交渉をしたりするのもカンファレンスなのです。

これまで開催されてきたベビーウェアリング・カンファレンスでは、まず初めにキーノート(基調講演)を全体で聞いた後、各部屋に分かれてインストラクターや各テーマのリーダー的な存在の方たちが活動の報告をしたり、普段自分が基板としているエリアで実際にやっていることをデモンストレーションしたりするクラスが開催されます。一方で、エキジビションホールでは業者がブースを出してそれぞれの商品を展示販売しています。
 私も朝から夕方まで隙間なくクラスの参加予約を入れて臨みました。その中で今回最も参考になったのはベビーラップのクラスです。インストラクター歴2〜3年のお母さん達が参加者にラップの使い方をレクチャーします。


日本のおんぶというのはささっと素早く装着するイメージですが、ヨーロッパ(アメリカも)の皆さんはスピードではなく、楽におぶい続けるための赤ちゃんの位置や自分の姿勢を重視します。だからおぶうまでの時間も結構長いですし丁寧なのです。大きく長い布をちゃんと広げて、しっかりギャザーを寄せて、きっちり(赤ちゃんを)くるんで・・・というように丁寧に巻いていきます。まずはそこの意識から違うのだということを感じました。おんぶが完成するまでに2~3分はかかりますが、おぶえるとこんな感じでしっかり体にくっついています。(右写真参照)日本ではおんぶして家事をするのですから、3分の時間をかけてでも楽におぶうことは体への負担の面を考えてもよいことです。しっかりおんぶされると赤ちゃんも楽そうに見えます。「簡単に」「早く」できることばかりがお母さんのためになることではないよなぁ、と思いました。 


カナダからの参加者、Arieたちの言葉も印象に残っています。彼女たちは米国やカナダにおいて、業者の品質向上のための活動にも一枚かんでいるのですが、普段は新しくママになった方にベビーウェアリングの様々な道具の使い方を教えているそうです。ベビーウェアリングすることは社会のために役立つと主張しています。ベビーウェアリングは住んでいる地域(環境)や民族の文化に強い影響を受けているのですが、カナダの寒い地域は雪が降るのでベビーカーは使えないそうです。ベビーウェアリングしない人はバスケット(取りはずし可能な車のカーシート)を持ち歩くことが多いようですが、バスケットに赤ちゃんを入れて自分から遠ざけておくよりも、ベビーウェアリングして赤ちゃんとくっついている方がより人間的であり、みんなの健康のためになると高らかに宣言していました。


その話の中で、「babywearing is Art」というフレーズが何度か出てきました。ベビーウェアリングはアートである、つまりは自由に巻くことができるということだそうです。アメリカ、カナダでは大きさを調整しづらいバックル型のスリングにより数件の事故がおきているため、顎をひきすぎた姿勢に対して非常にナーバスになっています。その姿勢さえ回避すればどんな状況でも使用できるということです。日本人は顎の角度以外にも脚の開脚を気にしなければいけませんが、それでもただ1枚の布を工夫することでさまざまな月齢の赤ちゃんを自由に抱いたりおぶうことができるというのは、まさに折り紙のようなアートです。私はかねてからベビーウェアリングは着物や折り紙、風呂敷のようなものだと考えていましたが、欧米人から見ると「アート」という言葉に集約できるわけですね。すばらしい。


カンファレンスはますます盛んになってきていて、来月10月には急きょオーストラリアでの開催が決まりました。2014年にはフェニックス(米国)、2015年にはマレーシアでの開催のための準備が進められています。個人的には日本でも開催したいと考えていますが、日本で開催するならば一般のお母さん向けのクラスだけではなく、世界で初めてベビーウェアリングを学術の面からも考えていくような内容にしたいので、いまだに開催を宣言できずにおります。どなたか背中を押して下さい。
 カンファレンスには今後も機会をみつけて参加したいと思っています。