北極しろくま堂メールマガジン

vol.151 2014.1.8


新年特別企画 対談
「母として、働く女として」第一部


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母として、
    働く女として

漫画家 ごとう和さん ×
    北極しろくま堂店主 園田正世

北極しろくま堂のオリジナルマントに同封している漫画「『マント』がおうちに来たよ」を手がけてくださった漫画家のごとう和さんは、3人のお子さんを育てながら30年以上にわたりプロの漫画家としてご活躍されてきました。子育てのこと、仕事のことなどを店主園田とじっくり語り合っていただきました。


園田
今回は北極しろくま堂オリジナルマントのマンガを描いていただきありがとうございました。

ごとう
以前から北極しろくま堂さんのことは気になっていたので、連絡いただいた時はとてもうれしかったです。漫画を書く作業というのは自分にとっては本当に楽しいんです。いつも「面白いものを書きたい!」って思っています。でもその面白さを出すのがなかなか難しくて。今回のマントの漫画も楽しく、しかも役に立つかなあと気になっています。

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漫画家になって

園田
ごとうさんは元々漫画家になりたいと思ってこの道に進まれたんでしょうか。

ごとう
高校3年のときに、勉強はもういいかなあと思って漫画に関係ある仕事につきたいと考え印刷会社に入ったんです。印刷している途中の漫画が見れるだろうって思っていました。甘いんですよね。

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園田
はは。世の中に出回るよりも先に見られると思われたんでしょうか。

ごとう
そうです。連載ものを夢にまで見るほど漫画が好きな人間だったからです。たくさん漫画を読めるぞと思って入ったんですが、全然違うところに配属されてしまって。そんな時にある漫画雑誌を見ていたら、劇漫画家さんがアシスタントを募集していたんです。それに何の気なしに履歴書と絵を書いて送ったんです。そうしたら面接にいらっしゃいますか、と言われて面接に行ったらトントン拍子に決まってしまって。結局会社には10日間しかいなかったんですよ。

園田
そうなんですか。

ごとう
そこから自分でも漫画を投稿するようになって、23歳で漫画雑誌『りぼん』でデビューしたというわけです。


園田
有言実行ということですね。

ごとう
実は私自身は覚えていないんですが、私が5歳か6歳のときに保育園の先生が「かずこちゃんは大きくなったら何になるの。」と聞いたら私は「漫画家になる。」って言ったそうなんですよ。

園田
へえ。その年ですでに漫画を読んでいらっしゃったのでしょうか。

ごとう
多分読んでいないでしょうね。しかもそれを聞いたのはプロになってからだったんです。不思議ですよね。その保育園の先生が今もご健在でして。

園田
ごとうさんは保育園に通っていらっしゃったんですね。

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ごとう
山形の農村地の保育園なので、すごく短い時間ですけれど。

園田
ご兄弟はいらっしゃるのでしょうか。

ごとう
私が一番上で、弟と10歳年の離れた妹がいます。

園田
それでは、妹さんの面倒などはみることがあったのでしょうか。

ごとう
10歳だったので、小学生の頃ですね。母親のお腹に赤ちゃんがいるということをよその人から聞いたんです。だからうちに帰って「なんか赤ちゃん生まれるようだけど、私は嫌だからね!」と腹を立てていたらしいのです。


園田
はははは。

ごとう
絶対遊ばないとか、面倒見ないとか啖呵を切ったんだそうです。覚えていないんですけれど。それで妹が生まれてから、やっぱりあまり遊んであげなかった。私の友達がうちの妹を負ぶっていた記憶はあったりするんですが。

園田
ごとうさん自身はあまり子守をしなかったということですね。

ごとう
多分しなかったと思うんです。した記憶があるのは、母親が出掛けていていない時に、おんぶとかをするへこおびか何か平らな木綿の布を、柱にくくりつけて、布を広げたところに妹をのせてゆらゆら。そんなあやし方というか、遊びをしていました。私が作った記憶かもしれませんが、落としちゃったような気もします。妹は覚えていないだろうと思っていたら、覚えていたんです。すごく怖かったことを覚えているんですって。

園田
そういう事って、やられたほうはしっかり覚えている。不安定に負ぶわれたり揺らされたりすると、赤ちゃんも怖いって思うわけですね。だっこやおんぶの記憶は残るものだとしたら、やはりしっかりと抱いたり負ぶったりしてあげないといけないのでしょうね。そんなにやきもちをやいてしまったのはお母さんが大好きだったんでしょうね。

ごとう
そうでしょうかね。母親が病気になったりして入院がちだったこともあったりして、好きでしょうがなかったという記憶はないんです。ただ、先日仕事でこの絵を書いたんです。この絵は写真を絵にしたものなんです。これかわいいでしょ。

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園田
お母さんが手を握っているんですね。

ごとう
この絵の手を握られているのをじっくり見て描いていると泣けてきちゃったんです。今も思い出してまたうるうるきそうなんですが。

園田
写真は以前から手元にあったものなんですよね。


ごとう
そうなんです。特別には思っていない写真だったんです。母は昔から愚痴の多い人だったりするので、正直苦手なのですが、実際に描くことで母に対する気持ちが掘り起こされたようで、幼い頃はこんなに頼っていたんだなあと思うと何だかほろほろときたんです。

園田
本当にこの手がとてもいいですね。ごとうさんご自身もお子さんは3人いらっしゃるんですよね。子育てのことをお聞きしてもいいでしょうか。

親になるということ

ごとう
長男の出産のときのことをよく覚えています。生まれた直後、看護師さんが赤ちゃんの体重を計ったり、体をふいたりしますよね。そうしているときに、自分の子の泣き声が聞こえるので、自分は横になりながらものすごく大きな声で「よしよしよしよし」って遠くにいる我が子に声をかけていたんです。無意識にそうしていた自分がなんだかとってもうれしく思えて。これを思い出す度にうれしくなるんです。

園田
それは生まれてきたことがうれしいのか、それとも声をかけていることがうれしいのでしょうか。

ごとう
もちろん生まれてきてくれたことはとってもうれしいのですが、そんなことを考えてもいなかったのに、無意識に「よしよし」と声が出ている自分に、「ああ、私も捨てたもんじゃないなあ」とまたうれしく感じているんです。

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園田
母性があったんだと実感したわけですね。

ごとう
多分そういうことだと思います。

園田
ご自身にとって新しい発見だったんでしょうね。

ごとう
それからもう1つ、一番上の娘の産後母親にしばらく手伝いにきてもらっていて、その母親が帰ってしまった後に、1人で子育てしなきゃって考えると、どうしたらいいのか分からなかったのです。
そんな時に、夕方子どもを抱いて散歩をしていると、近所の家から話し声が聞こえたんです。その家のお母さんが多分小さい子どもに話しかけていたんです。それを聞いて、ああこんな風に話しかければいいんだって感じました。今でもその時の映像が浮かびます。別にこの子は私の話しかけに対して言葉を返してくれなくても、こっちから話したいことをお話すればいいんだって、その時に学びました。


園田
へえ。近所のお母さんの会話からですか。状況が浮かんでくるようです。

ごとう
それが分かったときの感覚というのが忘れられませんね。今だったら育児本などに「ちゃんと話をして」とか書かれているんでしょうけど、昔はそういうのがなかったんです。私の勉強不足かもしれませんが。

園田
いや、そうじゃないと思うんです。「話しかけましょう」と書いてあることのほうが不自然なことではないかなと。赤ちゃんに話しかけるなんて誰かに言われてやることではなくて、湧いて出てくるもののはずです。本来湧いて出てくるはずのものが、育児書にはこれからこうなりますよ、と書いてある。これって感動が小さくなってしまうのではないでしょうか。

ごとう
そうですね。私もひとつひとつ手探りで分かってきた気がします。ああ、こんな風に話せばいいんだって気づいたというのは自分の中で大きなことでした。

園田
私は自分の子育てのときは育児書を沢山読んでいたので、今2ヶ月だからこれができる、こうである、と全部その育児書通りに進むと思っていたんです。育児書にはこう書いてあるけれど、自分の赤ちゃんは違うかもしれないということ自体に気づきませんでした。赤ちゃんってそんなものなんだよと言ってくれる人がいればよかったのにと思います。

ごとう
違って当然なんですよね。育ち方も、親もみんな違うんだから。実はもうすぐ孫が生まれるんです。楽しみです。

園田
そうですか。お孫さんが。自分の子育てのときとはちょっと違った立ち位置から見られますよね。

ごとう
だから何か聞かれたりしたら、言ってやろうと思います。「そんなもんだよ」って。

園田
身近にそう言ってくれる人がいるというのは、本当に心強いですね。

第二部へつづく

対談「母として、働く女として」 第二部

 


 

次号予告 新春対談企画「母として、働く女として」第二部

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とても暖かい印象のイラストを描かれるごとう和さん。お話していると、その温和なお人柄にほっこり穏やかな気持ちになります。第二部では、ごとうさんが子どもを抱えながらも常に第一線でお仕事されてきたお話を伺いました。




【編集後記】

あけましておめでとうございます。
今年も北極しろくま堂ならびに、SHIROKUMA mailをよろしくお願いいたします。
北極しろくま堂では、今月「おんぶのお試しサロン」を開催しています。「今の人はおんぶしないねえ」少しご年配の方からよく聞かれるご意見です。おんぶをしながら家事をしたり、農作業をしたり。昔は当たり前だったのがばってんおんぶの風景。お母さんやおばあちゃんの背中にいつも一緒にいるから、色々なものが見渡せる。おぶっているほうはいつも背中に赤ちゃんを感じていられる。そんな関係がお互いにとって当たり前だけれど、思い出すとほっこりした気持ちになる。幸せなおんぶの記憶が「今のママ達もおんぶすればいいのに」というご意見になるんだろうなと感じます。
日本人がおんぶをしてきた理由がわかる、「おんぶのお試しサロン」。お友達もお誘い合わせのうえ、ぜひお越しください。

SHIROKUMA mail editor: MK

EDITORS
Producer Masayo Sonoda
Creative Director Mayu Kyoi
Writer Mayu Kyoi, Masahiko Hirano, Nobue Kawashima
Copy Writer Mayu Kyoi, Masahiko Hirano
Photographer Yasuko Mochizuki, Yoko Fujimoto, Keiko Kubota
Illustration 823design Hatsumi Tonegawa
Web Designer Chie Hara