BLOG ブログ

抱っこ紐からの落下事故を防ぐためにたいせつなこと

抱っこ紐からの落下事故を防ぐためにたいせつなこと

数年に1度は抱っこ紐から赤ちゃんが滑り落ちて怪我をしたという事故が話題になります。東京都の調査によると2009年から2014年の5年間で117件もの落下事故が発生しているということです。このような事故にならないために、抱っこ紐を使っている時になにに気を付けたらよいでしょうか。

なぜこのような事故が起こるのかを道具の選び方と抱っこをするための道具の変遷から検討します。
(この記事は筆者が2014年にあるサイトに寄稿したものを加筆修正して掲載したものです。)

事故がおこるのは道具の使い方が下手だから?

落下事故の要因は以下のようなことが考えられます。装着がじょうずとか下手という問題ではなく、調整していないことが大きな要因です。

  • 抱っこ紐の大きさが体に合っていない→特に小柄・細身の女性には大きさが合わない抱っこ紐は多い
  • 抱っこ紐を体のサイズにあわせて使用していない→特に腰ベルトは正しく使っている人の方がすくない印象
  • 赤 ちゃんへの注意の向け方が散漫になってしまった→腰をかがめるときは特に注意
抱っこ紐SSC

もともと製品のサイズが合わないことに加えて、中学生頃から続けてきたリュックの紐を伸ばしてだらんと背負うことへの慣れがそうさせてしまっているのかもしれません。
しかし最も大きな原因はお互いの体に寄り添った気持ちの良い抱っこの経験やモデルがないことから、ぶら下げて「持ち運ぶ」ようになってしまっているために注意が向かないことが考えられます。

落下事故やその検証を受けて、各メーカーでは安全ベルトを二重にするなどの対応策をしています。筆者はそれに加えて海外製品であっても日本国内で販売する以上、主なユーザーである日本人の体型にあったものが提供されることを期待します。
製品としての安全対策も重要ですが、ユーザーとしては抱っこやおんぶをした状態で赤ちゃんがどのような姿勢をとっているか、重心はどこにあるのかをなんとなく感じられるような状態であるとよいと思います。
いつもいつも気にしている必要はないのです。ご自身がつらい姿勢だとか、動きにくいと思ったらストラップを引き締めてみましょう。特に腰ベルトは地面と水平にするのが正しい使い方です。多くの方は腰から下腹にむかって下がっています。←これが抱っこひもで腰痛になる主な理由です

私たち人類は過去何万年も安全ベルトなしで子育てと労働を両立してきました。便利すぎる生活と引き替えに、「これはおかしい」「危ない」と感じる身体感覚をなおざりにしすぎているように思えます。

しろくま堂の抱っこ紐には安全ベルトは付属していません

なぜなら、当社が扱うような布製抱っこ紐の場合は1枚の布でできていることなどから、ベルトが安全を確保することは難しく、ユーザーの皆さんに安全に使っていただくことが最も安全に使える最良の方法になるからです。布の強度や縫製が十分であっても、安全に使われなければ落下させてしまいます。
密着して抱っこすると重心がひとつになり、重さを感じにくくなります。そして気持ちよいのです。自分だけではなく、赤ちゃんも気持ちよさそうにすることでしょう。

抱っこしたあとのチェックポイント3つ

抱っこした後には、以下のポイントを確認してください。

キスができる高さ:赤ちゃんの頭にキスができますか?(Kissing Position)
M字開脚:赤ちゃんのお尻よりもお膝の方が持ち上がっていますか?
Cカーブ:お尻〜腰に掛けてCカーブになっていますか?

頭の上にキスができる高さであれば、ほとんど密着できているでしょう。脚がうまく開脚できていなくてずり落ちそうということなら、こちらの記事で詳しく解説しております。簡単に言うなら、「お尻から膝の裏まで太ももをなで上げる」と無理なく開けます。
動画ならこちらでいかがでしょうか。51万回再生されています。(動画は音声が出ます)

「抱く」という行為を腕の替わりに道具で行うなら、素手で抱っこしたときと同じように頭にキスができて、赤ちゃんの脚は開いて…という状態を再現できるはずです。抱っこ紐は本来、そのようなものであるべきだと考えます。

人は抱かれたから生きている

今、この記事を読んでいる方で抱かれたことがない人はいません。人は人に触れられないと生き延びられない生物です。 赤ちゃんを抱いたりおぶったりすることは、授乳とセットで何十万年も続いてきた行為です。赤ちゃんを身につけて何時間も労働に従事するためにはできるだけ両手があき身体に負担がかからず、しかも赤ちゃんの成長にとっても良い状態になっていることが求められます。そのために各民族はそれぞれの環境にあったやり方を発見し、道具を作って利用してきました。

抱っこ具・おんぶ具の成り立ち

伝統的な子育ての道具はその民族固有の体型や地形、気候などの環境にあったものが取捨選択されてきました。同時に民族の生活にあった身体性と切り離せないものであったようです。
アフリカの民族の多くもかつての日本人もよくおんぶをしていましたが、その位置や方法は全く異なっており、民族特有の体型と環境にあったやり方が受け継がれていました。一例はこちらの記事で紹介しています。

ルワンダのおんぶ(Back Carry)の様子
アフリカ全般で行われている背面での運搬。布を縛らずに巻いて支えている。
肌あわせでおぶう
江戸時代から昭和時代までの一例。「おむつなし育児」ですね。

しかし日本人の生活は半世紀ほどで劇的に変化しており、1世紀前の人と同じように身体を動かすことは難しくなっているようです。 今、子育てをしているお母さんたちに赤ちゃんをおんぶをしてもらうと、身体に馴染むようにおぶえない人も珍しくありません。周囲に心地よく抱っこやおんぶができている人が少ないのでモデルがいないために見たことがありません。見たことがないものを真似ることはできません。生活環境の変化が子育ての知見のせばめたと言ってもよい状況です。

そこに海外の道具が入ってきました。欧米の抱っこ紐やおんぶ紐はアフリカの人々と日本人のおぶい方が違うように、抱く・おぶうことについて元々の身体性や考え方が異なるベースから作られています。製品づくりの前提となる使用者の体型も欧米人と日本人では大きく異なります。
ヨーロッパでは赤ちゃんを体にくっつけること自体をやめていた時代が長く続きました。(一例はこちら
欧米と日本ではもともとの子育てに対する哲学も手法もかなり異なっていたのです。

ではアジア系の人々と日本人が同じような道具を使っていたかというと、欧米よりは親和性はありそうですが、違う点も多々あります。日本の子育ては身にまとう(babywearing)という言い方がぴったりで、例え自分が野良仕事をしなければならないときも連れて行き、近くに置くか年長の子どもに面倒を見させたり、あるいはおんぶして作業をしていました。その際、日本人の体型からしてアフリカの人たちのように負ぶうことはできないため、背中の高い位置で身にまとうように密着させていました。

まとめ

道具の安全性を確保するためには、道具にそのすべてを委ねて高性能な(自動で済むような)ものを作り上げるか、使用者もともに安全に留意するかのあんばいですね。
あらかじめカタチがつくられたSSC(Soft Structure Carrier)は、自由度は少ないけれども適当に使ってもだいたい安全に使えるようになりました。布製抱っこ紐は自由でフィットして気持ちよいけれども、赤ちゃんと二人で状態を調整する必要があります。この安全で心地良いというポイントはわかると素早く調整できますが、わかるまでが少し試行錯誤するかもしれません。
どちらにもメリットとデメリットがあるので、どうぞご検討ください!