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スリングで横抱きしない方がよい理由は?新生児ちゃんを危険に晒さないために

スリングで横抱きしない方がよい理由は?新生児ちゃんを危険に晒さないために

日本では推奨するスリングの使用方法として2007年から縦方向の抱き方『新生児の基本抱き』に変更されており、欧米でも2010年から同様に変更しています。理由は窒息事故が起こっているからです。
2014年にフランスで出された医療レポート『Infant Death In Sling』(DOI 10.1007/s00431-013-2238-6)をひも解きながら、スリングでの横抱きの危険性について考えてみましょう。
>新生児をスリングで横抱きすることは絶対に禁止ではありませんが、よくトレーニングを受けたベビーウェアリングコンシェルジュなどの指導を受けることをお勧めします。

レポートに書かれていること

<医療レポートに書かれている内容を要約します>ベビー用スリングで横抱きにされた赤ちゃんのリスクについて、アメリカ保健局と消費者団体が警告をだしているものの、医療文献ではほとんど報告されていません。柔らかい布でできたスリングで赤ちゃんを横抱きにした場合、小さく丸くなりすぎることによって窒息の危険があります。

乳児突然肢症候群(SIDS,SUID)との関係

乳幼児突然死症候群(*日本ではSIDS“シッド”と呼ぶことが多いようです)を防ぐために、仰向け寝や母乳育児を推奨したり、受動喫煙を防ぐことなどが推奨されています。そのようなキャンペーンによって2005年以降のSIDS発生率は著しく低下しました。
このレポートを書いたフランスの病院では2名の4カ月未満の子がスリングで横抱きされている間に呼吸が停止し、その後に死亡しました。これがSIDSと関係があるのか、またはスリングの使い方に起因するものかを検討しました。

事例

二人の赤ちゃんはいずれも健康状態には問題はありませんでした。ふたりとも誕生以来スリングを使用して、横たわるように(横抱き)して抱かれていました。
呼吸停止時にはふたりともスリングで抱かれていて、母親が最後に動いていることに気付いた15分〜30分後に呼吸停止したことがわかりました。病院に到着後には投薬をしましたが、6〜7日後に死亡しています。いずれも死因は窒息に由来するものと考えられています。上部気道閉塞の可能性が強く示唆されました。

スリング横抱きとの関係(Discussion部分)

スリングでは以下の危険があります。

  • 赤ちゃんの鼻や口が大人(親、使用者)の体に押しつけられたとき→窒息の危険
  • 首すわり前の赤ちゃんで頭部のコントロールが自分自身でできない時期に胸に顎を締め付ける(小さく丸くなりすぎる)ことで、気道に空気が通りにくくなるとき→窒息・低酸素の危険
  • スリングで全体を覆われた上に、大人のコートなどでカバーされる→異常な兆候が検知されない危険

小さく丸くなりすぎることによってSIDSの危険を招きますが、北米やオーストラリア(当社でも)で推奨されているようなたて抱きをすることで危険は回避されます。

各国の対応

ここでは、1のレポートで紹介されてる他国の情報を確認しましょう。

クィーンズランド/オーストラリア

ベビーウェアリング指導者の界隈では、オーストラリアのクイーンズランド州政府がスリングの安全な使い方を広報していることはよく知られています。
詳細はこちらのページに書かれています。この中でも紹介されているビデオはこれです。(音がでます)

ビデオに登場するコンサルタント、あるいは上記ページの最後には情報は専門機関から入手するようにと書かれていますが、日本ではNPO法人だっことおんぶの研究所などから入手することができます。また必要であればコンサルタントと一緒に装着方法を学びましょうと勧められています。だっことおんぶの研究所の『ベビーウェアリングコンシェルジュ』は全国各地で講座を開催しています。詳しくはこちらをご覧ください。

アメリカ・カナダ

2010年3月に米国消費者安全委員会(CPSC)が「袋型」スリングに対して警告を発し、それをAP通信が報道しました。警告と報道を受けて、米国およびカナダのベビーキャリアの業者が同年3月11日に声明を発表しています。
主な主張をざっくりまとめると以下の通りです。
袋型スリングというのは底が舟形に成型されており、赤ちゃんが底に寝るような状態で抱かれる(運搬される)製品です。大きさや深さの調整が難しいものです。

  • スリングには様々な種類があり、「袋型」スリングはそのひとつにすぎない
  • 「袋型」スリングは赤ちゃんがCのような姿勢に丸くなりすぎることがあり、呼吸を阻害したり窒息する可能性があることを認める
  • しかし、他の底が浅いタイプのほとんどのスリングは危険性が低いばかりか、適正に使うことで親子によい状態を与えることができている
  • 抱っこされていることによる効果について、いくつか研究がある
  • 危険なスリングとそうでない多数のスリングは分けて考えるべきで、スリングだとして同じものとしないでほしい

この声明のあとに、ベビーキャリアの業者や公的機関、コンサルタント、エデュケーターたちが皆で安全なスリングの使い方を本格的に議論して、わかりやすく提示しました。

スリングの正しい使い方図説

日本

日本ではスリングを使うことで赤ちゃんが窒息したという事例は起きていませんが、2005年ごろから股関節脱臼を招きやすいのではないかと言われていました。当時は横抱きをしていたため、スリングの中にすっぽり入る体勢になっていました。もちろんそれでも『高い位置』で『顔がみえるように』使っていれば呼吸については問題ありません。
2007年に当時の日本ベビースリング協会が日本小児整形外科学会 股関節研究会の先生方と話し合い、現在の『新生児の基本抱き』を完成させました。
結果的に日本の方が北米・カナダの声明より3年早かったのですが、窒息回避や股関節のことを考えるとこういう抱き方が理にかなっているのでしょう。この抱き方であれば、使用者と赤ちゃんの接触面が最大になるので、赤ちゃんもより一層落ち着くと考えられますね。

新生児の基本抱き

まとめ

ヨーロッパの安全な使い方の基準「T.I.C.K.S.」については本文では割愛させていただきました。
『スリングで死亡した赤ちゃんのリポート』というショッキングなタイトルですが、よく読んでみると問題なのはスリングではなくて赤ちゃんの姿勢です。横抱き+顔が見えない状態はとても危険なので、そのように抱かない方が良いでしょう。スリングで横方向に抱っこしたい方は、よくトレーニングを受けた専門家に指導を受けることをお勧めします。

スリングの横抱きは推奨しない

もしかしたら「●●は絶対に××だから良い」という指導者もいるかもしれませんが、抱っこやおんぶにおいては「絶対」に「誰にも良い」ということはないと思います。赤ちゃんは成長するし日本には四季もあるので、その時々で安全な方法の種類や使いやすい道具も変わってきます。お母さん・お父さんと赤ちゃんにあった安全で快適な方法を見つけられるとよいですね。

この記事は2018年7月13日に出稿されたものに加筆修正しました。