理学療法士さんとペルーのおんぶを考えました


10月のある日、ペルーで活動している青年海外協力隊のRさんからご連絡をいただきました。ご自身は理学療法士でいらっしゃり、ペルーに派遣されているとのこと。
身体の歪みなどからリハビリを受けている子どもさんに対応されているそうで、その対策を考えたいのでなにかアドバイスをということでした。
※北極しろくま堂ではこのようなご質問をいただくことは珍しくありません。

1.専門家の見立て

1-1.子どもの身体のゆがみは生活習慣が原因か

Rさんが派遣されたペルーではお子さんの脊柱疾患・側弯症が目についたようです。リハビリに関わる中で、この状況はどこから発生しているのかを考えたRさん。
赤ちゃんは説明してくれませんから、赤ちゃんや子どもの身体のことはどこに原因があるかはわかりづらいものなのだと思います。

1-2.伝統的になされていることを見直してみる

ペルーでは伝統的にマンタ(manta)と呼ばれる1枚の布を使って背中に背負うことが行われているようです。確かにペルーの画像を検索するとカラフルで少し厚手に見える布がたくさんでてきます。きっと生活に根付いた布なのでしょう。
赤ちゃんはそのマンタを使って長時間背負われていることが多いそうです。家事や仕事中はもちろんですが、地方によってはご飯の時以外はずっとおんぶしているそうです。赤ちゃんが寝ているときと起きている時では少しおぶい方に違いがあるようですが、Rさんが日本で見ていた赤ちゃんの過ごし方とは印象が違うほど長時間であるようです。

ちなみに日本の昭和初期の育児の指南書などを読むと、首がすわってからおんぶするように書いてあります。ですけれども当時は育児書を読む層は限られていましたし母親といえども働かなければならない人が多く、またねんねこ袢纏(はんてん)などの衣服を着る習慣もあるので、頭部の揺れをある程度押さえることもできたでしょう。風俗や習慣を伝える本によると、お宮参り(生後30日頃)には子どもをおぶって鳥居をくぐらなければいけないという地域もあったようです。
日本の場合はまず衣服が洋装化され専用のおぶい具が流通するようになったので、それに対する安全性をメーカー側が商品と共に公にしてきたということもあります。また、日本におけるそれらの『伝統的ではない』新しい商品の使い方を説明する義務もあったので、モノの流通とともに、おぶい方・使い方の変革も一気に進んだのかもしれません。

1-3.手に入れやすいものしか使えない

子育ては日常生活に中に溶け込んでいます。また収入なども日本に比べて少ない国では、新しいモノを購入して使うということが難しい場合があります。今回の場合では例え1枚や2枚のおんぶ道具を提供したとしても(北極しろくま堂から提供できなくはない)、あとが続かないとまた元に戻ってしまうことでしょう。
そうなると、現地の方が負担を感じずに入手できるもの=今目の前にあるマンタを活用することが最良だと考えました。

2.提案内容と結果

2-1.マンタ(manta)の素材

マンタはペルー国内の地域によっても厚みや素材が少しずつ違うようですが、今回お尋ねのところでは綿素材は高価だとのこと。化学繊維も混ざっているそうですが、それをうまく使いこなすことが最善でしょう。
現地で多少無理して入手できたとしても、高いものを購入させるのでは継続が難しいと思います。でも化学繊維は結び目が緩んだり赤ちゃんが下がってしまうこともありますが、それは仕方がないこととして刷り込み済みで進めるしかありません。

地域によってはウールや麻をつかったマンタもあるようですから、そのような地域でおんぶの改善が必要になった時にはより良いですよね。

2-2.股関節をM字にする背負い方の工夫

「赤ちゃんはMW(エムダブリュー)の姿勢でいる」と習っている方は多いと思います。このM字開脚は体の前面を180度開くような姿勢ではなく、お尻が奥まってお尻の高さよりも膝が持ち上がっている立体的なM字です。
生後2〜3ヶ月でお母さんの身体が日本人の標準的な体型であれば、お母さんの身体にしがみつくような姿勢、コアラが木にしがみついている姿勢がM字の開脚のお手本です。

ペルーの場合は首すわり前の赤ちゃんを横方向におんぶすることもあるようですが、そうすると赤ちゃんの身体が側弯してしまいます。
縦方向でおんぶしていただき膝が上に持ち上がるような姿勢をとらせます。そのためには両サイドの布が持ち上がれば良いのです。

※定頸かどうかは現地で判断、グラつく場合は首回りに布の厚みを持たせるなどします。今回の場合はすでに数ヶ月の間違った生活習慣によりリハビリに入っている子が対象になるため、皆定頸していました。

赤ちゃんが背中で足を閉じないようにするために、三角の下辺の布を赤ちゃんのお腹にかかるように折り返してもらいました。こうすると布が赤ちゃんのお腹とお母さんの背中に挟まれます。挟まれた布は二人が密着している限り摩擦によってキープされるのです。

2-3.M字にした脚をキープする技

次に動いている間にM字が崩れないようにします。お母さんの肩(実際には腕の付け根付近)の布を上下逆さまにする方法を提案しました。これはベビーラップではフリップと呼ばれる手法です。こうすることによって、下辺にあった布が上辺でキープされやすくなり、より安定します。

まとめ

北極しろくま堂を始める時に、相手に「土足でずかずかと入っていくことはしない」と決めました。今回のペルーからのご相談は何百年も続いてきたマンタという文化を尊重し、使い方を工夫することで改善できないかを考えました。
〈布製の抱っこひも(おんぶ紐)は摩擦で安全が確保されている〉という基本的な知識を応用してご提案させていただきました。

また、赤ちゃんは様々な環境を経験することが発達にはとても大切なことです。でも靴のまま家にあがるペルーでは赤ちゃんのハイハイも衛生面から多少のためらいがあり(親の方がですね、きっと)、Rさんとしては指導の難しさもあるようです。
日本では家の中は土足ではありませんが、住宅事情とモノが多いことによってつかまり立ちしやすい環境が整っています。発達は平均よりも早ければ優秀なのではなく段階を踏んで進むことが良いそうなので、できればハイハイして移動する時間を長くつくってあげたいものですね。

(店主・園田 正世)


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