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vol.132 店主が行く 探求の旅 -ねんねこ半纏と子育て-

vol.132 店主が行く 探求の旅 -ねんねこ半纏と子育て-

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店主が行く
探求の旅 -ねんねこ半纏と子育て-

北極しろくま堂のおんぶひもは昔ながらのばってんタイプ。元々は着物の帯等を使っておんぶをしていたものを、昭和30 年代に商品として作られた型です。
 
亀の甲は赤ちゃんの保温ですが、ねんねこ半纏は赤ちゃんとお母さん両方の保温のために使われるものです。
 
北極しろくま堂店主園田が今回、ねんねこ半纏のことを調べたいと訪れたのは静岡県藤枝市の「こころ庵」さんです。こころ庵は古民家を利用したギャラリーで、オーナーの新井さんは銘仙(めいせん)を軸にアンティーク着物の展示を頻繁に行っていらっしゃいます。銘仙というのは大正昭和に流行した、発色が美しく、ユニークな柄が多い平織りの絹の着物です。

ねんねこ半纏と一口に言っても、その素材は様々だったようです。今回見せていただいたのは絹やウールのものでした。襟元はレース等を使用して、赤ちゃんのよだれ等で汚れたら取り替えていました。ねんねこ半纏は嫁入り道具に入っていたこともあったそうで、子育ての必須道具だったことが伺えます。

また、ねんねこ半纏は着物の上から羽織るものだったので、中の着物のぼろ隠しとしてもうまく利用されていたそうで、お出かけ用のねんねこ半纏は高価な絹で作られ、柄も見栄えのするものだったと考えられます。

伺った話によると、ねんねこ半纏は「はしかにかかるまで置いておく」ものだったとのことで、はしかの子どもをねんねこ半纏にくるんで風に当てないようにして医者に連れていったりと、少し大きくなってからも使えるものとして大切にとっておいたそうです。
 
人工染料の鮮やかな色合いが特徴の銘仙の着物ですが、裏地にくちなし等天然の草木染めのものが用いられているものもあり、昔も今も赤ちゃんには優しいものをと考えていたのかもしれません。

こころ庵にあった絹のねんねこ半纏は、羽織るとその軽さに驚きます。
赤ちゃんをおんぶした上から羽織るのには、軽さはとても重要です。またその質感から、羽織ったときの姿形も美しく、オーナーさんは「現代のお母さん達がジーンズ等と合わせても格好よく着られるはず」とおっしゃっていました。

確かに銘仙の柄は決して古く感じず、おしゃれです。「かわいいからぜひ今の若いお母さんにも着てもらいたい」という気持ちで、こころ庵ではまだ着る事ができるアンティークのねんねこ半纏を貸し出すこともあるそうです。

新井さんがねんねこ半纏を貸し出したときに気になっていらっしゃるのが、おんぶの高さだそうです。ねんねこ半纏を羽織る時にはやっぱり日本の高い位置のおんぶでないと格好が悪いのです。また、保温が目的のねんねこ半纏ですが、低いおんぶでは赤ちゃんをしっかり覆えないので、保温効率も悪くなります。お母さんの肩越しに赤ちゃんが向こう側をのぞけるおんぶだからこそ、上からねんねこ半纏を羽織ってママも赤ちゃんも暖かいという良さが生かせるのでしょう。

改めて昔ながらのおんぶひもやへこおびでのばってんおんぶは「日本」の文化であり、その高さひとつとっても民族の体型だけでなく、気候風土等様々な要因があって成されてきたものなのだと感じました。

今回の訪問で一番印象に残った話は、一緒にいらっしゃったS さんのご自身のおんぶ体験の話。S さんは小さい頃お母さんにおぶわれていた時、お母さんの声が耳からではなく、おぶってもらっている背中から響いて伝わってきた心地よい感覚を今でも覚えていらっしゃるというのです。おんぶして育てられた子どもは、そんな自分だけが知っているお母さんの声を体全体で感じながら、毎日過ごしているのでしょう。それは、「愛情」という形でその子の体の中にじんわりと染み込んで、その子の土台を作っていくのかもしれません。

日本の育児文化「おんぶ」。家事や仕事の効率をあげるためだけのものではなかったということを再確認しました。


DATA

■ 古民家ギャラリー「こころ庵」/藤枝


EDITORS
Producer Masayo Sonoda
Creative Director Mayu Kyoi
Writer Mayu Kyoi, Masahiko Hirano
Copy Writer Mayu Kyoi, Masahiko Hirano
Photographer Yasuko Mochizuki, Yoko Fujimoto, Keiko Kubota
Illustration 823design Hatsumi Tonegawa
Web Designer Chie Miwa, Nobue Kawashima(Rewrite)