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vol.104 対談「小さな芽をふきますように ~震災後私たちができること~」第二部

vol.104 対談「小さな芽をふきますように ~震災後私たちができること~」第二部
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昨年の東日本大震災により被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
昨年3 月11 日以降、北極しろくま堂は一企業として何をすべきかを問い続けていました。
そして、この度本メールマガジンにおきまして、震災に改めて向き合う対談を企画しました。
震災から1 年が経とうとしている今こそ読者の皆様とともに、
もう一度この大きな災害について考えます。

コピーライター 糸井重里氏 × 北極しろくま堂店主 園田正世
対談「小さな芽をふきますように ~震災後私たちができること~」第二部

対談企画 小さな芽を吹きますように~震災後私たちができること~コピーライター糸井重里氏×北極しろくま堂店主園田正世 タイトル画像
コピーライター糸井重里さん × 北極しろくま堂店主 園田正世 対談企画トップ画像

震災直後、糸井さんがどう考えたかについて教えていただいた第一部に引き続き、被災地へ出向いたときの話を伺いました。被災地は何を求めていたのか、私たちは何をすべきなのか、答えを探します。

対談「小さな芽をふきますように ~震災後私たちができること~」 第一部はこちらから
対談「小さな芽をふきますように ~震災後私たちができること~」 第三部はこちらから

生きる誇り

園田
「絆」という言葉が今年の世相を表す漢字にもなりましたが、その絆が全てシステムになっているような印象があります。どこがどうと言われると分からないんですが、そういうシステムの話ではなくて、人がそこに会いに行くとか触れ合うとか、親子の場合だったら目を見つめるとかいうことが本当の絆じゃないのかなと思うんです。ものを送ったりすることも、もちろん助かるとは思うんですが。一般的に今年言われてきた絆と、人間同士の絆というのは少しずれているような気がします。

糸井
後先が違うだけじゃないかと思います。僕らが気仙沼に出かけていくということを中心に動いているのも、それに早く気づいたということなんです。気づけないチャンスだらけなんですよ。だって僕は最初に心の問題はともかくとしてお金を送りましょうと、心の問題を後回しにしようと言った人間ですから。それこそシステムですよ。あなた方が思っているより被害はすごく大きくて、助けられないかもしれないくらい大きいぞと。でも時間がたった今になると、今度は仕組みと心の問題を両方考える余裕が出ますから、どちらも大切ですよ。
 
園田
確かに震災直後と今ではニーズも違います。仕組みと心、両方大切ですね。ただ仕組みは見えやすいし報道もされやすいですが、心の部分はなかなか見えないです。
 
糸井
現地に行くとご馳走になってしまうことが多いんです。とれたてのかつおなんて僕らはこっちで食べたことないですし、ほんとうにおいしいんです。僕らに食べさせる為にはやっぱり準備もしてくださっているし、お金も使ってくださっている。手伝いにいっているはずなので、ボランティアは原則としてはそういうおもてなしをお断りしなきゃいけないらしいんですが、彼らはそれがしたいんだとしたら。

園田
糸井さんがくるからしょうがない、ではないんですね。

糸井
1枚余計に服がほしいということよりも、人が来たときにごちそうする自分でありたい。それが誇りなんですよ。

園田
ああ。ものすごくよく分かります。

糸井
全部貰い物で済んで、なんでもご馳走してもらえるよということでは、人が生きるということにならないんですよね。人にごちそうをして、誇りが得られる。これを理解するのはなかなか難しいですよね。

園田
ええ、難しいですね。

糸井
顔を見ないと理解するのは難しいですよね。笑顔でそれを語られたら、僕らはこれからもご馳走してくれってお願いします。(笑)そしてそれに報いるために、僕らはモノ以外で何ができるんだろうと考えるから友達になれるんです。基本的には今の状況というのは、飢えて死ぬ人はとっくにいなくなっています。流れてしまったものをどうやって取り返せるかという方法論が語られているけれど、一番つらいのは職がなくて、稼ぎ出すという誇りがもてないことです。

園田
そうですね。働くことは強い誇りです。

糸井
人は何かをしてもらうために生きているのではなかったんです。隣の人の力になるために生きてるんです。ボランティアが勇んでいける理由って、力になれるからですよね。だからご馳走が出なくても、自分は疲れていてもゼロ泊3日みたいなことができるんです。でも現地の人は、助けてくれてありがとう、今日もありがとう、明日もありがとうと、ずっとありがとうと言っている人生は選びたくないですよ。そこはその人それぞれですけど、ありがとうっていう言葉を言い続けられるかといったら、それは大変なことです。もっとこれより他はないのかっていう人もいるかもしれない。だけどよっぽどそれは不幸な人です。

何をするべきか

園田
阪神や中越など近い過去に大きな震災はありましたが、今回の震災が特に糸井さんを突き動かしたのには何か理由があるのでしょうか。
 
糸井
もちろん過去の震災で被害に遭われた方々へのお見舞いの気持ちはありましたが、怖いとは思っていなかった。でも今回は自分自身が怖かったんです。東京は揺れましたから。阪神大震災の頃はフリーで仕事している時代だったんですが、今は社員がいます。社員と家族をかけ算すると結構な人数がいるんです。あれだけの広さの土地で、あれだけの人間が、あれだけの被害に遭って、これから時代がこのまま同じように進むはずはないっていう怖さもありました。目の前であの津波を見てしまった人の数が亡くなられた人より多いんですよ。そのキズってものすごいなと感じられたんです。自分の家も10階より高い建物で、犬がベッドの下にずっと隠れていました。

園田
怖かったでしょうね。

糸井
お茶碗が割れて、全部おかってに山になってという状況でした。寝室に置いてあった32インチのテレビもどかんと倒れていましたし。色んなことが、具体的にこれは大変なことだぞって体で感じられたんです。そういった自分が感じた部分と、他人の安全を考える立場にあったというこの2つがとても大きかったですね。

園田
私も経営者の立場として仕事について人に言われたんですが、商品やサービスを待っている人がいる状況で、その製品やプロジェクト自体を投げ出す訳にいかないんだと。ほぼ日手帳なんて特にそうですよね。

糸井
手帳のチームは一番のかきいれ時だったのでがんばっていました。それをストップする訳にいかないですし。仕事がある人間の大きな震災との関わり方を初めて考えましたが、みんなで被災地にスコップ持っていくぞということはやはりできない。そのできなさをさっきも言った通り、とても意識していましたね。それで何ができるか分からないけれど、お金に換算してできることというのは先に考えられる。それは最初に気付き、そのあとはずっと探していました。4月の始めに飛行機が山形までいけるようになったので仙台に一度お見舞いに行きました。

園田
お見舞いというのは、どちらに。

糸井
仙台のロフトに行ったんです。ほぼ日手帳でなんども行っていたお店なので、行けるんだったら行こうと思って行ったんです。そこで「遠くからありがとうございました」とは言われたけれど、歓迎されている気はしなかったです。なんの役にもたたないし。だからと言ってがっかりはしなくて、ただ僕たちがやっていることは何かが違うんだろうなと感じました。その違和感というのは、その時はなんだかよく分からないままでした。

園田
その違和感のようなものから、どうして気仙沼のほぼ日を立ち上げるに至ったのでしょうか。

糸井
東京に戻ってきてもまだわからなかったんです、何をしていいか。伝えることがというけれど、僕は別に伝えることで何かできているという気がしなかったので。変な渦に巻き込まれるのを、ちょっと待って待って、ということだけを繰り返していました。みんなが大きな声を出しているときってなにか危ないので、それだけを一生懸命防ごうとしました。できることはあんまりないし、心配しても進まないしということだけを発信して。そんな中、ツイッターを通して知り合えた被災地の女の子と東京で会う機会がありました。そしたらその子が「来てくれるだけでうれしいです」って言ったんです。「なにそれ?」って思いました。「忘れられるのが怖い」ともう4月の時点で既にそう言っていたんです。震災からたった1ヶ月なのに。それはちょっと驚きでした。

園田
4月と言えば、まだ生々しい頃ですものね。

糸井
まだ臭いがしていましたよね。その時期に彼女は、私たちはみんな同じ目にあってるから話をする相手がいないんですって言ったんです。

園田
体験や思いをはき出せないということでしょうか。

糸井
もっとひどい人がいるから地震のことを話さない、話せないんだそうです。
そして、そのもっとひどい人は自分のほうがひどいってことをまた誰にも言えないんです。だから僕たちのような外から来た人に、そのとき自分がどう逃げたかの話をします。命は助かった人の話なのにすごいんですよ。みんなそういうことを話したいんですと言っていました。かといって「こんにちは話を聞かせてください」というのも変だしなあと考えていました。自分のできることがやっぱり分からなかった。そうしたら、「行ってほしいところは、3カ所あります」って急に彼女が言い出しました。彼女のなかではまとまってたんです。ひとつはお墓が間に合わないくらい亡くなったので、土葬されました。その土葬のお墓をお参りしてほしいと。もうひとつは、一番救われない場所としてお墓に入る前の遺体安置所。最後は避難所。この3カ所を見てほしいと。

園田
ただ見てほしいんですね。そこでなにかをしてほしいんじゃなく。

糸井
そうです。来てくれればそれでいい、それ以上何もいらない、思いつきもしないって。それで一緒に行ったんですが、安置所はその時はもう親戚しか入ってはいけないと言われて入れませんでした。そして土葬の現場に足を運びました。そこで、死者と生者と前日までの村や町が地元の人の心の中にはあるんだと感じました。自分が一人行方不明だった人と会えたとしますよね、もう一人例えばお父さんが亡くなっていたとしたら、そのお父さんに「お父さん、よしこに会えたよ」って話しかけるんです。亡くなったのが確定していても。地元の人にとっては生きている人と死んでしまった人と両方で村なんだなと思いました。彼女がなぜあそこに来てほしいと考えたのか分かる気がしました。

園田
生きている方々の心の中に。

糸井
心の中ではまだ死んでないんです。これは震災の報道のなかには表れません。それでもまだ自分にできることが分からなかった。何回も探しに行ったり戻って来て考えたり、ずっと仕事に使う頭と同じようにそのことについて取り組みました。大げさに言えばひとつの事業計画みたいに練っていった道筋が今日までにあるような気がします。だから、思いつきやすい人が思いついたんじゃなくて、探しましたし、また僕が探すことで楽になる人がいっぱいいるんです。僕も手伝いますとか、それいいですねとか言ってくれる人が出てきて。ちょっと一回り先に考える立場になって、あるいはもっといいことを考えている人の話を聞きに行くとか、色んなことをしました。今でもまだ探している最中で、できることだけ見つけては、やっているというのが事実ですね。
 
園田
私たちも災害の後に、だっこやおんぶするものがないという話を聞いてさらしを100反お送りしたんですが、さらしを送るのは簡単なことで。

糸井
そこまでは簡単。

園田
はい。私たちが伝えるべきことは、単にだっことおんぶをすれば楽ですよという話ではなくて、それを日常的に使うような社会であるとか、そうすれば親子の関係がより深まるとか安心するとかということで。この事をちゃんと地に足をつけて知らせていかなければならないと思ったんです。でも全然即効性があるものでもないし、すぐに目に見えるものでもない。何十年かたたないと分かってこないことなんですが、でもやっぱりそれは大事なことなんだと思いました。

糸井
うん、やっぱり知らず知らずのうちに効果が見たいとか、やった気になりたいというのがそれぞれの人にある。私はなにをしたらいいんでしょうって、僕だってやっぱり思っているし、みんな思っているんです。だけど、その道のりは長いんです。

対談「小さな芽をふきますように ~震災後私たちができること~」 第一部
対談「小さな芽をふきますように ~震災後私たちができること~」 第三部


糸井重里さんプロフィール

対談ゲスト 糸井重里さんプロフィール画像

コピーライター/エッセイスト。1971年にコピーライターとしてデビュー。以後、時代を象徴する数多くのヒットコピーを生み出す。現在インターネットで「ほぼ日刊イトイ新聞」を主宰している。

ほぼ日刊イトイ新聞 http://www.1101.com/home.html

気仙沼のほぼ日 http://www.1101.com/kesennuma/

吉本隆明氏との対談
「日本の子ども」 http://www.1101.com/nihonnokodomo/

糸井重里さん著書

糸井重里著 「できることをしよう ぼくらが震災後に考えたこと」 新潮社

「できることをしよう ぼくらが震災後に考えたこと」
新潮社

糸井重里著 「羊どろぼう。」ほぼ日ブックス

「羊どろぼう。」
ほぼ日ブックス


お知らせ・フォトコンテスト締め切り間近

入賞すると北極しろくま堂製品をゲットできる毎年恒例のフォトコンテスト。
応募写真は改めてかしこまって撮る必要はありません。赤ちゃんとのいつもの毎日の一コマを少し切り取って送っていただくだけで構いません。過去の受賞作品を見ても、どこかにお出掛けしたり、よそいきの姿を撮った写真より、日常の一ページを撮った写真のほうが圧倒的多数を占めています。
今年は応募期間が短いためか、応募が少し少なめです。入賞の確率が高いかもしれませんよ!
締切は1 月31 日24 時。ご応募お待ちしています。
フォトコンテストの詳細はこちらでご確認ください。



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次号予告

新春対談企画「小さな芽をふきますように~震災後私たちができること~」第三部

三回にわたってお届けする糸井重里さんとの対談の最終回。
目に見えるもの、目に見えないもの、両方大切にしながら復興を考えていかなければならない、という今回の話に引き続き、様々な観点から復興のためにできることを糸井さんは探し続けられたそうです。現地の人の生の声、感触を確かめながら、糸井さんが出した答えとは。


編集後記

だっことおんぶの季節
冷え込みが厳しくなってきました。ずっと暖房の入った家の中でぬくぬくしていたいけれど、出掛けなければいけない、そんなときまだ歩かない赤ちゃんとどうやってお出掛けをされていますか?
寒い季節のお出掛けはベビーカーよりだっこやおんぶがお勧めです!発熱インナーが流行っていますが、あのインナー自体が熱を発するのではなく、自分の体温があたたかいからその熱で温まる仕組みのものだそうです。寒い季節にも暖かいのは体温なので、赤ちゃんと離れているよりぴったりくっついているほうがお互い暖かいのです。お父さんも一緒に出掛ける日は暖かい赤ちゃんの取り合いになりそうですね。
 
SHIROKUMA mail editor: MK

EDITORS
Producer Masayo Sonoda
Creative Director Mayu Kyoi
Writer Mayu Kyoi, Masahiko Hirano
Copy Writer Mayu Kyoi, Masahiko Hirano
Photographer Yasuko Mochizuki, Yoko Fujimoto, Keiko Kubota
Illustration 823design Hatsumi Tonegawa
Web Designer Chie Miwa, Nobue Kawashima (Rewrite)
 
☆Happy Nurturing☆
HOKKYOKU SHIROKUMADO