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vol.68 対談「まねっこでいいからだっこして」第二部

vol.68 対談「まねっこでいいからだっこして」第二部
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絵詞作家 内田麟太郎さん × 北極しろくま堂店主 園田正世
対談「まねっこでいいからだっこして」第二部

第二部では親からもらう愛情や親子関係について、内田さんご自身の幼少期の体験も織り交ぜながらお話しいただきました。“ことば“を自在に操る絵詞作家内田麟太郎さんの源泉に触れられる貴重な内容となっています。

対談 「まねっこでいいからだっこして」第一部はこちらから


その人の基礎となる官能性

園田
今はベビーカーなどお母さんが楽になることを前提とした育児グッズがいいものだと思われているんですが、日本でも昔抱っこやおんぶをしていたときには、赤ちゃんを床に置いたままで家の人が何かしているというのは滅多になかったと思うんです。そういう文化自体が存在しなかったと色々調べていると分かってきます。
 
内田
四六時中そばにいてあやしていたのは、食べさせるものもおもちゃもなかったからですね。 かすかに覚えてるんですが、疎開していたときに実の母親やいとこ達と河原に行って、ホタルのえさのカワニナを食べていたんです。戦時中で食べるものもなかったから、カワニナを捕ってきて塩を入れてゆがいて、竹串でほじくって食べていました。

園田
ええ、そうなんですか。カワニナって食べられるもんなんですね。
 
内田
ふふふふふ、ホタル様には申し訳ないんだけどね。そういう記憶がぼおっとあるんです。
私は再婚で来たお母さんに愛されなくて、殺してやる、とまで思っていたんだけど、なんで殺さなかったのかな、俺って人がいいなあと思っていたんです。これは自分がそういう低い感情を乗り越えていこうと思って生きてきたせいなのか、学校で教わった道徳の力なのかってずっと考えていました。ところが最近、違うんだって分かったんですよ。
亡くなったお袋とは6歳になるかならないかで別れたので顔はよく覚えていません。でも人がいいだけの母で、とても優しかったそうです。私を抱っこしたり、手をつないだり。母親から人間と人間の関係というのかな、優しさをもらっていたんだと思います。それがその殺させなかった力だったり、子どもの本を書いていて自然に出てくるユーモアだったりするんだと今は思っています。
絵本作家に田島征三さん(※1)という方がいらっしゃるんですけど、とてものびのびとした絵を描かれるので編集者が、どうしてこんなに自由に描けるんですかって訊くと、「だって5歳児になったつもりで書いてるんだもん」っておっしゃったそうです。田島征三という人にとって5歳の頃が一番輝いていたわけです。田んぼの中を走り回って、カエルやドジョウを捕まえたり、土とかが足の裏にぐにゅっとくる感覚とか。官能性(※2)というものが5歳の田島さんの中にあるんでしょうね。この官能性が育っていないと、学問でも何でもあるところで止まると私は思ってるんです。色々な本の中でも、その人がそういう官能的なものを含めた形で語ったり、論を進めたりしている本は面白いと感じます。

園田
官能性ですか。

内田
父が再婚してから急に私にとって理解のできないことが起きたわけです。6歳までは幸せだったという体験があるので、多分脳みそがつまづいたんだと思うんです。だからそのつまづきがずっとあって、子どもの本を書きだした頃は言葉がすごく硬かったんです。子どもの本の業界に入ったからこう書こうって、知識で書いていたんでしょうね。例えば「◯◯だもーん」って書くといいんだよなって知識はあるんだけど、書いてみるとなんかいやらしいんです。ところがずっとやっている間にふと自然に「だもーん」が使えるようになっていて。これはもちろん子ども達に読まれていったというのもあるんだろうけど、やっぱりその6歳まで私を抱っこしたり、あぶあぶという言葉にならない言葉に付き合って、私の言葉を育ててくれた母親の力なんだなあって思うんです。6歳までの私の中に官能性が育っていたということです。やっぱり子どもにとってそういうのが一番基礎であって、それがないとその子がその後生きていくのにやはりやっかいなんですよ。

爬虫類の育て方!?

園田
赤ちゃんの言葉にならない言葉に付き合うのって本当に大切なことだと思います。
よくお客様にベビーカーとスリングのどちらを買ったらいいかと質問されるんです。すごく好きな人、例えば恋人とはとにかく隣にいたかったし、何かがあったら話をしてすぐに伝えたかった、とにかく近くにいたかったと思うんです。赤ちゃんってお母さんに対してそういう感情をもつはずですとお話すると、なるほどって分かっていただけるんです。もっとたくさんの人にそれを知ってもらいたいなと思っています。

内田
抱っこですね。抱っこするからこそ目を見れて、話せるんです。
 
園田
はい。相手が近くにいるから伝えられるし、相手もそれに気付ける。言葉を話せない赤ちゃんなら尚更そうだと思います。抱くとか近くに寄り添っているというのは哺乳類がもらったすごいプレゼントですよね。
 
内田
そうそう、ワニなんかね、卵をほったらかして蒸し風呂みたいに地熱に頼ったり、草木をのせて温めたりするんですよ。爬虫類の育て方だものね、抱っこせずに置きっぱなしって。
 
園田
ははは、そうですね。

内田
やっぱり生まれてからできれば中学3年生くらいまでお父さんとかお母さんの愛情って余りあるくらいあってもいいと思います。
ある人が断言していたけれど、中学生まで親子の間がしっかり愛している関係になっていれば、まず自殺しないし人を殺さない。そりゃ反抗はするだろうけど、反抗というのは成長のためには必要なことですから。私はうなずけるなあって感じました。中学卒業して高校生になってから「そんな格好しちゃいけない」とかなんとか言うのは、その前にうまくいっていないということですよ。

絵本は二番目

園田
さきほどカワニナを食べていた頃、戦時中でものはなかったとおっしゃっていましたが、当時絵本などもなかったんでしょうか。
 
内田
私たちの頃っていうのは桃太郎さん、金太郎さん、浦島太郎さんしかないんです。だから物語の出だしはいつも、「むかしむかしあるところにおじいさんとおばあさんがいました」です。今は「子どもに読み聞かせたい良い本100冊」とかってありますけど、良いも悪いもないんですよ。だから私は絵本は二番だっていつも言うんです。一番はお母さんやお父さんがその子をお膝にのせたり、寄り添ってその本を読んであげる関係。その関係が一番なのであって、本はどんな本だっていいんです。我々が書いているのはあくまでもその二番目の素材であって、本がなければでたらめに「あそこの川に昔カッパがいたんだよ」とかでもいいんです。今はもうあふれかえるほど本があるから「良い本100冊」とかいうけれど、私たちの頃はなかったですよ。

園田
確かにそうですね。まずは関係が一番。

内田
言葉を書くときはこれが相手に伝わるよって信じなきゃ書けないんです。言葉で互いの関係に橋をかけられると、どこかで信じています。だけど橋がかかるようなやわらかい言葉っていうのは、やっぱりあの6歳までの母親がくれたものだと思うんです。人間は信頼に値するとかしないとかという理屈じゃなくって、信頼関係の中にいたんじゃないかと思っています。あの当時、普通のソメイヨシノの桜のさくらんぼを母といとこ達と食べていたんですよ。だけどおいしかったって記憶があるんです。今食べてみるとよくこんなの食べていたなと思うんですけど。それがとてもいい記憶として残っていてね。

園田
お母さんやいとこの方と一緒で幸せだったというのも、「おいしい記憶」に含まれているんでしょうね。
絵本を書いているときって内田さんご自身もその登場人物の子どもの年になっていらっしゃるんでしょうか。それとも遠く離れたところから見て書いていらっしゃるんですか。

内田
書いているときは、まあ子どもにまでなっているかは分からないけど、とにかく「子どもが絶対よろこぶなあ、よろこぶぞ、よろこぶぞ」と思って書いている私がいますね。一方でこの方法でこの作品は成功するのかって冷めたもう一人の自分がいるんです。プロってみんなそうだと思うんです。自分の想いだけで突っ走っていって、これこんなにいいでしょというのはアマチュアの世界。これ(スリング)だってアイデアはいいんだけど、売るためにはお母さんたちが街に着ていって恥ずかしくないようなお洒落なデザインにしようと考えるじゃないですか。

園田
そうですね。流行などはやはり考えていかないと実際に使ってはいただけませんね。
 
内田
だから書いているときは面白い面白いって、なるべく理屈から外れた世界、本能的な世界にいくようにするんです。本能的なところへいけばいくほど面白くなります。例えば「まねっこでいいから」の「とっくんとっくんとっくん」っていうのは幼児語に近い感じでしょう。
 
園田
はい。大人の言葉というよりは小さい子の言葉みたいですね。

内田
それがふっと「来て」くれたとき、自分の男性的しばりが外れちゃってるわけですから、ああいいなあって思う。同時に「あ、これでこれは本になるぞ」って思うのは何十年かやってきたプロの冷静なカンなんです。そんな立場のちがう2つの視点が自分の中で同居しています。昔は年をとるのを恐れてたんですけど、ところが年をとればとるほど、その「とっくんとっくん」というような言葉が昔より出てくるようになったんですよ。これはうれしいことですね、本当に。だから絵描きさんの絵を見ていても80過ぎた絵描きさんの絵はいい。こんなバランスの悪い虎は絶対歩けないという感じだったり(笑)、このハイエナの自在感がいいなあって。どんどんこういう境地にいけたらいいなあって思いながらやってるんです。だから年をとってくることの良さっていうのは、そういうのが自然に出てくることですね。若い時は方法論が先にきてそれにしばられちゃうんですよ。

園田
ついつい頭でっかちになっちゃうんですね。

内田
そう。50過ぎたら何書いてもいいやって感じになってきたんです。おれはもうすぐ死ぬんだも~ん、何言われたって平気だも~んっていう感じになってくるんですよ。いいですよ、50過ぎると。

園田
ははは、そんなもんですか。50代がなんだか楽しみになってきました。

内田
それで私を支えるその自由の根拠というのは、本で読んだりして出来上がったものかなと思ってたんです。ところが最近、その自由な感じ、命ののびのびした感じ、みずみずしい感じというのは、私が6歳までに経験してきた遊びの中での命の喜びや、母親からもらった愛情のようなものが、その根拠になってるんじゃないかなあって、このごろ思うんです。その子が中学生になるまでに、その命の喜びというようなものができていれば、たとえ全体主義的な体制になっても、「オレ、これなんかいやなんだ」と感じる大事な根拠になるんだと思います。だから赤ちゃんって命のぬくもりがあって、抱っこして、お母さんと言葉は通じないけれど伝えあって大きくなっていくべきなんです。ちゃんと言葉を話していないうちからもう始まっているんだから、言葉を話せるようになってからさあ話しましょうじゃ、ちょっと遅いんです。
 
園田
赤ちゃんは話せないだけで、あぶあぶという喃語(なんご)で色々お母さんに伝えようとしているんでしょうね。

内田
前になにかを読んでいたら、宇宙人と話せる言葉は喃語だろうって書いてあったんです。あ、これはすごいって思ったんです。赤ちゃんはあぶあぶ言っているんだけど、お母さんは赤ちゃんの言っていることが分かる。そこから始まっているから中学校過ぎて手直ししようとしても本当に大変でしょう。スキンシップしていない子どもには理屈で叱るしかないんです。
教育勅語では子どもはよくならないです。やっぱり抱っこして赤ちゃんの話に付き合うことが一番。大きくなってから理屈で治るくらいだったら苦労はしませんよ。

対談企画「まねっこでいいからだっこして」第一部はこちらから


*1 田島征三……絵本作家、美術家。絵本の代表作は「とべバッタ」「ちからたろう」など。
*2 官能性……感覚器官を通して得られる快さ。特に、性的な感覚を享受する性質。


内田麟太郎さんプロフィール

福岡県大牟田市出身。19歳にて上京後詩を書きながら看板職人として働く。38歳から子どもの本を仕事とするように。絵本や童話で数々の賞を受賞。
著書は絵本「さかさまライオン」(絵/長新太 童心社)、「うそつきのつき」(絵/荒井良二 文溪堂)「がたごとがたごと」(絵/西村繁男 童心社)、「おれたちともだち」シリーズ(絵/降矢なな 偕成社)童話「ふしぎの森のヤーヤー」(金の星社)、詩集「きんじょのきんぎょ」(理論社)など他多数。
内田麟太郎ホームページ
http://www.max.hi-ho.ne.jp/rintaro/index.html

内田麟太郎さん著書ご紹介

内田さんは非常に多くの本を手がけていらっしゃいます。ここに挙げるのはそのほんの一部です。
著書一覧はホームページにてご覧いただけます。

絵本 ちゃいますちゃいます
絵:大橋重信
(教育画劇)

童話 ぶたのぶたじろうさんシリーズ
絵:スズキコージ
(クレヨンハウス)

絵本 さかさまライオン
絵:長新太
(童心社)

詩集 きんじょのきんぎょ
絵:長野ヒデ子
(理論社)


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編集後記

前号から続けてお届けした内田麟太郎さんとの対談、いかがでしたか。
一冊の絵本に込められた作家さんの想いは、やはり親子の関係を育むことにつながります。
読み聞かせとベビーウェアリング。どちらも今日から始められ、親子の関係作りには最適な手段です。「親子の関係は一日にして成らず」ということが再確認できた対談でした。
 
SHIROKUMA mail editor: MK

EDITORS
Producer Masayo Sonoda
Creative Director Mayu Kyoi
Writer Mayu Kyoi, Masahiko Hirano
Copy Writer Mayu Kyoi, Masahiko Hirano
Photographer Yasuko Mochizuki, Yoko Fujimoto, Keiko Kubota
Illustration 823design Hatsumi Tonegawa
Web Designer Chie Miwa, Nobue Kawashima (Rewrite)
 
☆Happy Nurturing☆
HOKKYOKU SHIROKUMADO
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