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vol.3 日本流Babywearingが姿を変えた理由
本連載のvol.1でお話しした日本流のBabywearingが姿をかえていった理由の背景には、おんぶひもというBabywearingの道具と、育児方法の両方の変化がタイミングよく重なっていると思うのです。
北極しろくま堂の「昔ながらのおんぶひも」の型紙をおこすときに大変お世話になった育児用品製造メーカー(株)トリゴエさん(※)のはなしによると、第2次世界大戦の直前または直後に、それまでの「一本ひも」タイプのおんぶひもに「背当て」がついたタイプが開発されたそうです。
ところが、1960年代なかばに入ると、「おんぶのしかたがわからない」という声がユーザーから寄せられるようになり、この背当てつきタイプのおんぶひもに赤ちゃんのあしを入れる「わっか」がつけられました。
赤ちゃんをおんぶするときは、赤ちゃんの背中から両脇のしたを通したひもを胸の前でまとめてきゅっと握り、赤ちゃんごともちあげて肩ごしから背負います。
このときに赤ちゃんの足が「ぶらり」となった状態のままなので、おかあさんたちは赤ちゃんが落ちてしまわないか心配になったのでしょう。
その流れから、赤ちゃんの足を入れるところが最初からわかるよう、お尻のあて布の脇にわっか型のひもをつけてみたり、さらにその部分を少しくりぬいて太ももがちゃんと入る形にしてみたりして、赤ちゃんにおんぶひもをセットする際にはじめから足をおんぶひもへ通してしまうというやり方がうまれました。
やがて、おかあさんの胸を強調してしまうような「バッテンひも」タイプが姿を消していきました。
追い打ちをかけるように、1970年代なかばになって元歌手の山口百恵さんが赤ちゃんを「抱っこ」で育てていることがマスコミで報道されました。それからおんぶひも自体の消費量が激減し、主流は赤ちゃんを胸の前でかかえる抱っこひもにうつっていったそうです。
一方、戦後の占領政策の一環で実施されたさまざまな制度改革がそれまでの日本の伝統的な育児方法に大きな影響を与えました。
たとえば、助産院や自宅で「産婆さん」の介助でおこなわれていたお産も、病院でするようになりました。赤ちゃんが泣いたらおっぱいをくれてというやり方は自立心が育たないと考えられ、一日に必要なミルクの量は計算して与え、赤ちゃんをコントロールしようとしました。また、抱きぐせをつけてはならないと、赤ちゃんはベビーベッドにひとりで寝かせるのが一番いいという考えを広めました。
赤ちゃんは何かを要求しているときに「泣く」ということしかできません。
ですから、この「泣く」という行為によって赤ちゃんが訴えようとしていることはいろいろあります。それは、何かを飲みたいとか食べたいということだけに限らず、暑いとか寒い、気持ち悪い、痛い、さみしい、怖いなど本当にさまざまです。泣いている赤ちゃんを放っておくと、「いくら泣いても誰も私の訴えにこたえてくれない」と赤ちゃんは感じとることになります。この訴えを無視しつづけると、やがて赤ちゃんは自分の体の中に感情をおしこめてしまうとされています。「サイレントベビー」という言葉は耳にされたことがあるかもしれませんね。
先に触れたおんぶひもの歴史、そして戦後の占領政策など、いろんなことが重なりあうようにおこって日本流のBabywearingはその姿をかえていったのです。
お母さんと赤ちゃんのもっともよい関係
わたしたち北極しろくま堂がスリングやおんぶひもなどの「Babywearingの道具」を通じてみなさまへ一番提供したいことは、「お母さんと赤ちゃんのもっともよい関係」です。
お母さんと赤ちゃんの関係性がよくなることとは、「今以上に密になる」ということ、そして「今以上に一緒にいて安心できる」ことだと考えます。
ですから、これを実現させるための道具である弊社のスリングやおんぶひも、タートリーノなどの商品を企画したり改良したりするときに最優先して考えることはたった二つ。
それは、「使い勝手がいいこと」と、そしてなによりも、「安全であること」です。そうでなければ、日々使おうという気持ちもおこりませんからね。
赤ちゃんとのふれあいを大切にする子育てのしかた「アタッチメントペアレンティング Attachment Parenting」や、それによって親子の絆が深まる「ボンディング Bonding」などを重視する方もいらっしゃいます。それらを理解した上でスリングやおんぶひもなどを手にいれるのもいいでしょうし、逆にこういったことを知らない状態でそれらを手にしていただくのもいいでしょう。
また、この色がかわいい、これがかっこいいといったファッション感覚で「とりあえず」Babywearingをはじめていただいてもかまいません。
使っていただいているなかで、「なんだか落ち着く」とか、「しっくりくる」とか、「赤ちゃんって四六時中泣いているものじゃないんだ」、という声が少しでも聞ければ、わたしはそのお母さんと赤ちゃんが今よりもいい関係性をもつお手伝いができたと思います。
Happy Nurturing☆
北極しろくま堂店主・園田正世
※(株)トリゴエさんは戦後すぐに創業し現在は残念ながら廃業されました。