トップページメールマガジン特集/カテゴリー別 ≫ 対談「目と目があって つながって」第二部

わらべ唄は、単なる手遊び唄ではなく「人を育てる知恵の唄」ということを
教えていただき、北極しろくま堂の目指すbabywearing(子どもをまとうこと)の
大切さとの共通点もたくさん見いだせた第一部でした。
さらに「子どもとの関わり合い」について、お二人のお話しがつづきます。

ひとつひとつに意味がある、わらべ唄。

中田

先ほどご紹介した「ちょつ ちょつ ちょつ」という唄。おむつ替えのお尻を拭いたあと「ここは早く隠すものだよ、恥ずかしいよ」って伝えたい時に唄いかける「ちょつ ちょつ ちょつ」には、長い唄もあります。「ちょつ ちょつ あわわ かいぐり かいぐり とっとのめー」ってご存知ですか?

園田

そのままではないけれど、似たような唄を聞いたことがあります。

中田

わらべ唄は、言葉や動作ひとつひとつに大事な意味が込められています。まず「ちょつ ちょつ」というのは、先ほど言ったように恥ずかしいという意味。次の「あわわ」は、口を慎みなさい、っていうこと。そして「かいぐり かいぐり」は、「耳をかっぽじって、人の話をよく聞きなさい」という忠告が入っています。最後の「とっとのめ」も、魚を「とと」と呼ぶ地域もありますが、遠野では鶏さんの目なのです。鶏は人間よりすごく遠くが見えるんです。

園田

そうなんですかー。

中田

鶏ってまんまるの目をしているでしょう。そのようなしっかりした目でよく相手を見、そして周りも見なさい。ひいては将来を見通して、先々のことを考えなさい、という意味なのです。

園田

わらべ唄というのは、楽しい手遊び唄というのではなく、ひとつひとつに深い意味や願いが込められているんですね。

中田

そうです。ただ遊ぶときは、大人は教えようと思ったらだめ。本当に心から遊ぶのが大事です。そして時には、はやしてみたり、誉めてみたり…。

信頼関係があるから「はやせる」

園田

その「はやす」ということをもう少し教えていただけませんか。最初の「ちょつ ちょつ ちょつ」の説明のときにも「はやす」とおっしゃいましたよね。はやすって、難しいですよね。そういう唄もあるのですか。

中田

ありますよ。4歳ぐらいからはじめる「弁当しょって どこさいく?」っていう唄。私自身は小さい頃「ご飯つぶつけて どこいくの?」って言われていました。

園田

ああ、ありますね。

中田

園田さんに想像して欲しいのですが、それを言われたらどんな感じがしますか。

園田

「あー。恥ずかしい。はやく取らなきゃ」っておもいますねー。

中田

そうですよね。子どもは、わらべ唄を唄う大人の表情や雰囲気からいろんなものを感じとっています。ご飯つぶを付けた自分を恥ずかしいとおもい「次から言われないようにしよう」と気を配ることができるようになってゆくのです。もちろん最初は、言葉そのままを受け取りますし、優しく世話をしてくれている親や、身近な人から急に言われるので、子どもは戸惑います。「なぜ?」って思います。だけど、普段の生活の中で、愛情をいっぱいもらっているから「意地悪で言われているのではなくて、自分のために言ってくれているんだ。」というのが次第にわかってきます。

園田

確かに好きな人から言われたら「あー、恥ずかしかった。次から気をつけなくちゃ。」で終わりますね。

中田

そうなんです。それがからかわれたり、はやされたりを経験していない子は「え?何でそんなこというの?」と考え込むことがあります。もしくは、心にきゅーっと受け止めすぎて「意地悪は言わないで!やめて!」と過剰に反応してしまう場合もあります。最近は大人にも見受けられますよね。だから昔のように、小さい頃からたくさん遊んで、いろんな人と関わって、少しずつからかわれて、はやされて、強くなっておくことが必要なんですね。

園田

なるほど。信頼関係ができた上での「はやし」という体験は大事ですね。

「モノ」を好きになる前に「人と自分」を好きになって欲しい。

園田

ところで、このようなわらべ唄は一対一で伝えるのが基本ですか。

中田

そうです。特に0歳児は一対一です。目と目をしっかり見つめ合いながら、親から子どもへ伝えるものです。そして、その一対一の相手が少しずつ増えてゆきます。昔は、保育園や幼稚園とかなかったでしょう。子どもはひとしきり家の中でおばあちゃんと遊ぶと、ふらふらと庭づたいに出て行って、隣のおばあちゃんちを覗いて、そのおばあちゃんからも遊んでもらって、またふらふらと(笑い)今度は向かいのおじいちゃんとも遊んで、やがてお家に帰ってくるような生活でした。

園田

一人ずつ丁寧につながっていったということですね。

中田

はい。ただ、現代は難しいですよね。周りが保育園や幼稚園へ行っているのに、うちだけ行かないわけは…ねえ。そうそう。園の話題が出ましたが、子ども達って、毎日とても頑張っているんですよね。だから、お家に帰ってきたときは、親子でべったりして欲しいとおもいます。あとね、きょうだいがいると「みんな一緒に」となりがちですが、必ず一人ずつ相手をして欲しいですね。どんなに大きくなっても、一対一で向き合ってもらうことはすごく嬉しいことなんです。園田さんとこの「だっこひもやスリング」のように一対一で。そしてその時は、しっかりと見つめ合うのが大切。ヤヱさんの言葉を借りれば「目を通して心をつなげる」ということです。家の中で親と向き合えて絆を深められた子どもは、よそに出ても一人の人とちゃんと向き合えるんですよ。

園田

身近な人間との関係をしっかり築ければ、外に出てもあとは大丈夫だと。

中田

そうです。まず、お母さん、お父さんを好きになって、その周りの大人を好きになって、一人の友だちを好きになって、そして人間を好きになる。それと同時に自分も好きになってゆくのです。好きになるというのは、絶対的な安心感、信頼感も伴います。「モノ」を好きになる前に「人と自分を好きになる」そういうことを大事にしていって欲しいと思います。

「いたー」と声をかけ、見つめあう時に赤ちゃんは満たされる。

園田

それというのはまさしく、「基本的信頼感(※3)」ですよね。これまでの北極しろくま堂のメールマガジンでも頻繁に登場している言葉です。

中田

そういうことはおっぱいを与えている時から、始められます。おっぱいをあげて目が合ったとき、「いたー」と声をかけてあげる。ヤヱさんの東北弁だと「えだー」となるのですが、「いたー」「いたー」って言ってあげると赤ちゃんは嬉しいんですよ。

園田

赤ちゃんって、おっぱいを飲んでいる時ってときどき母親を確認しますよね。横目で見るって言うのではなく、ちゃんと顔を上げて正面からじっと見ます。それかな。

中田

そうそう。そのときに「いたー」って親が言ってあげるんです。赤ちゃんに応えてあげると、赤ちゃんも「ああ。応えてくれた」って、安心するんですよ。

園田

その積み重ねですよね。一番シンプルですが、一番大事なことですね。

誉められるって、大人だって嬉しい。

中田

赤ちゃんと遊ぶ場合のわらべ唄は、大人が声をかけて反応を待つ、というものや、動作を繰り返し見せて真似するのを待つ、というものが中心です。むやみに手足を持って動かしたり、顔をさわったり、つついたりはしません。それは、派手な動作がそこに加わると、本当に伝えたいことが消えてしまうからです。かといって全く触らないというわけではなくて…。園田さん、ちょっといいですか。

園田

はい。


中田

昔は、しもやけやあかぎれにならないように寒かったらこうやって(手を挟んで)「なんのそえそえ かんのそえそえ あらねがそえそえ」って言ってたんですよ。おまじないの唄。今は寒いと暖房器具に頼るけど、昔は「親の愛」が暖房そのものだったのね。それと(園田さんの頭を撫でながら)「あー いい子 いい子 いい子 いつもお仕事 ご苦労さん」「あー 家事もやって 飛び回って いつも偉いねー 園田さん めんこ めんこ めんこ いいこ いいこ いいこ」

園田

(少し照れながら)わはははは。

中田

わははー。「めんこ めんこ めんこー」「いいこ いいこ いいこー」ね。嬉しいでしょ。本来は子どもを誉める時にしますが、こうやって大人が大人にされても嬉しいでしょ。いい子になるおまじないなんですよ。

園田

やっぱり、すべてにおいて、中田さんがなさっていることは、ハウツーじゃないんですよね。

中田

園田さんがそうおもってくれるのは、本当に嬉しいです。

園田

こちらこそありがとうございます。最後に読者の方にメッセージをお願いします。

中田

「だっこひもやスリング」を使って、ぺったり抱き合うことはよいことですね。そして、そこから出してからもわらべ唄によって関わりを持って欲しいとおもいます。たとえ密着してなくてもいいんですよ。目をちゃんと見て、赤ちゃんの反応を見てくださいね。心をつなげて、信頼関係を作っていってください。

園田

ありがとうございました。今日はいっぱい誉められたので、明日から頑張れそうです。

<中田好子さんプロフィール>

現在、静岡市葵区にて「ここあのいえ」開業中。
公式HP http://cocoaacoco.petit.cc/

子育て支援センター講師
保育園・幼稚園講師
NPOしずおか環境教育研究会会員
元幼稚園教諭・元子育て支援センター指導員
元絵本とおもちゃ専門店勤務(プレイルーム担当者+わらべ唄と遊びの会担当者)

2児の母(中3娘、中1息子)


※3 基本的信頼感
 乳児期において乳児と母親や養育者が相互に抱く信頼関係を基本的信頼感といいます。この基本的信頼感がしっかり獲得できると、養育者に対する信頼だけでなく、成長後も「自分は価値のある人間である。この世は良いところだ。自分は愛されている。」といった自己肯定感や、他者への信頼感にもつながると言われています。

<中田さんからのお願い>

この対談の文章を読んで、すぐに叱ったり、いきなりはやすことをしないでくださいね。段階を踏んでいくことが大事です。信頼関係がしっかりできていないと逆効果になってしまいます。阿部ヤヱさんの著書もたくさん出ています。参考にして下さいね。


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