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医学博士石田勝正先生×北極しろくま堂店主園田正世

対談「抱かれる子どもはよい子に育つ」

2007年暮れ 京都のホテルにて

"Babywearing"−赤ちゃんを身にまとい育てる、抱っこしておんぶして育てる方法は単に実用的であるという事実のほかに子どもの情緒発育にとても良いという研究があり、北極しろくま堂でもその調査に取り組んでいます。
そこで2008年最初のSHIROKUMA mailでは、新年特別企画として、わたしたちのホームページでもご紹介している新生児の抱っこのしかた「コアラ抱っこ」を考案した医学博士の石田勝正先生にお話を伺いました。
整形外科・心療科の医師として、40年以上にも渡り赤ちゃんの心身双方の健全な発育に身を投じてこられた石田先生の言葉には、これ以上無いほどの説得力があります。現在3児の母でもある北極しろくま堂店主園田正世との対談をどうぞお楽しみ下さい。

世界中のお母さんたちとつながって「波」をおこす

園田

わたしたちは抱っこやおんぶの商品を製造販売していますが、わたしの感覚としては単なる「道具」を売っているのではなく、「お母さんと赤ちゃんの関係性をよくするもの」を提供していると思っています。
その為には、お母さんの不安感を取り去ることも大切です。わたしは、スリングに赤ちゃんを入れてゆっくり抱いているうちにお母さんの不安感が取れてゆくのも、スリングの重要な効果であると考えます。母性が抱いているうちに強化されてゆくのですね。
ベビーカーや快適なお尻ふきなど、便利なものは世の中に沢山あります。でも、「親子の関係性をより良くするもの」というのはだんだん隅に追いやられている気がします。スリングは母と子の「心」を一緒に入れる袋だとわたしは思っています。

石田

スリングは、両手を使えて便利なところがある事はすぐに理解されますが、重要なのは「抱っこが赤ちゃんと母親の心を育てる」のだということです。安心して長時間抱けるスリングは、愛情を次の世代へ引き継ぐ道具だと最近思うようになりました。

園田

世界中の伝統的な抱っこひもを見ていると、スリングと同じように必ずお母さんに密着するようにできています。保育する人に密着することが原理原則のようです。

石田

その通りです。スリングで抱っこされると子宮の中にいるような感じなのでしょうね。子宮の中は、妊娠の終りに近づくとぎゅうぎゅうに狭いのです。

園田

わたしはもう一回子宮に入ってみたいです(笑)。

石田

そういった心理療法があるみたいですよ。
小さな入れ物に人間を入れて、そこから再スタートさせるとか。あるいは、土管の中をくぐらせて、お母さんの産道を通ってくるような体験をさせるというのもありますよ。おもしろいでしょう。最初はまわりと密着していた方が安心なのですね。

園田

先生のコアラ抱っこも面白い発想です。
あれはどのようにして考案されたのですか?

※石田先生からいただいた赤ちゃんの股関節脱臼の予防に関する資料より(より詳しいものを本編末にご紹介します) ※北極しろくま堂サイトでコアラ抱っこをご紹介しているページはこちら

石田

自然から習ったものです。裸にして抱っこしたらあのようにしかできません。言葉はユニークですが、やり方は自然そのものですよ。
スリングを用いる場合も、生まれたその日からコアラ抱っこをして下さい。あしを外へ出して運動を妨げない使い方も股関節脱臼予防には大切です。あしを伸ばし、そろえてスリングに入れておられるのを良く見かけては、「赤ちゃんの股関節脱臼によくないなあ」と思って私は見ていたのですが、最近は母親への指導が業者の皆さんから行き届いてきたようで、コアラ抱っこでスリングを用いておられるのをよく見かけます。ほっとしています。

〜コアラ抱っこの利点〜

  1. 首がすわる前でも赤ちゃんを少し斜めにして向かい合わせに抱き、お母さんの肘を枕にすれば、赤ちゃんの首も安定し無理がかかりません。
  2. お母さんと向かい合わせにして抱くことによって、赤ちゃんのあしの自然な形をそのままにできるので、赤ちゃんの股関節脱臼が生後発生することを予防することができます。
  3. 向かい合わせに抱くことにより、お母さんと赤ちゃんが目と目を見合わせて交流することになります。これは、大人になって人の目を見ながら関わり合うための訓練になります。目をしっかりと見て関わり合うことは、子どもの時も大人になってからも心の交流にとって、とても大切です。
園田

ところで、わたしは先週仕事で韓国にいってきました。
韓国でも若いお母さんたちはあまり抱っこしないのです。韓国にはからだにまきつけるような伝統的なおんぶひもがあるのですが、おばあちゃん世代は使えても若いお母さんは使えないので、かわりにベビーカーを使います。しかも子育てを自分でせず、おばあちゃんたちに任せるというパターンが多いようです。
また、韓国でも受験が厳しく早期教育がエスカレートしています。子どもをより賢く育てて良い大学へ入学させることが、その子の人生にとって良いと考える為でしょうか。

石田

韓国の若いお母さんにも抱くことの大切さを教えてあげてください。
親は、有名な大学を出たらその子どもの人生は安泰だと思ってしまう。しかし自然な育児をしないと本人の心がしんどいのです。不完全な自我のままで生きるのは大変困難なことです。生後初期の段階でしっかりとお母さんに抱っこされる事で愛情を体験して「愛されている自分」(自我)をつくる。その自分が、また愛情を体験してさらに自我をつくる。愛情と自我がゆきだるまのようになってふくらんでゆくのです。教育やしつけよりも、愛情と自我を発達させることの方が先に必要なことです。

園田

わたしは日本だけではなくて、韓国やほかの国でも是非積極的に赤ちゃんを抱っこして欲しいなと思います。

石田

日本だけの問題ではないのです。世界にむけて同じことをしないと日本に定着しません。明治以来そうです。外国から日本でやっていることを認めてもらうと、日本はそれに賛同するのです。日本人は日本人の主張をもっと認め合ってよいと思います。日本は先進国でありながら後進国のような劣等感がある。学問の世界でもそうです。スリングの世界でも同じでしょうかね。

園田

スリングはまだ単に「ファッション」とか「新しい育児方法」であるということだけで捉えられがちです。親子の関係性といったところまで考えてこの商品を発表できる人が世界に3、4人程度しか見つかりません。良い製品をつくるのはもちろんですが、わたしとしては「心」のこと、「赤ちゃんも母親も安心できて快い親子の関係」をもっと勉強して、海外でBabywearingを研究している人たちに日本の情報を提供してあげたいと思います。
世界中の、赤ちゃんを抱っこすることの良さに気がついたお母さんたちと手をつないで、何か「波」をおこせないかと考えています。それには日本だけでは弱いのです。

石田

世界に「波」を、とは大賛成です。
20年くらい前の日本のある新聞記事に、ヨーロッパのどこかの国の街角でおじいさんが小さな紙に「hug hug hug」と書いたものを配っているという内容のものがありました。要するに赤ちゃんを「抱く」ことの大切さに気づいた人が当時すでにいたのです。
そのおじいさんは今は亡くなっておられるかもしれませんが、その思いはその土地で確実に生きているはずです。「抱く」ということがきっかけで、先に私がお話した「安心で快い感覚」に戻れると気づいている人たちが世界に以前からいたのです。

園田

より人間らしい、自然な子育てが世界に広まるよう今後も勉強してゆきます。先生、この度は本当にありがとうございました。

石田勝正先生

医学博士 整形外科/心療科医師
昭和11年名古屋市生まれ。京都大学医学部卒。昭和52年医学博士号取得。翌年、先天性股関節脱臼の発生・防止の研究と実践の成果により京都新聞文化章受賞。神経、筋肉、骨、関節など運動器の外科(整形外科)の他、精神医学にも深く携わる。日本心身医学会会員。著書に『図説・先天性股関節脱臼-予防・みかた・治し方-』(金原出版・愛光出版、増刷中)、『抱かれる子どもはよい子に育つ』(PHP研究所)、『生きる原点-心のはたらきを科学する-』(ネオ書房・愛光出版)、『心って何だろう』(麗澤大学出版会)がある。
※これらの本はもよりの書店でお求めになれますし、愛光出版のFAX(075-712-0086)サービスでもお求めになれます。
石田診療所 京都市北区小山上総町11 フェニックス21ビル2階 〒603-8143
TEL・FAX:075-432-9360

『抱かれる子どもはよい子に育つ』PHP研究所のページはこちら↓
http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=978-4-569-54144-0

A/B 股関節脱臼について C 股関節脱臼の予防について

※石田先生からいただいた赤ちゃんの股関節脱臼の予防に関する資料より


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