特集「しろくまの生地物語—グランデってすごい」
北極しろくま堂の扱う生地には、糸の紡ぎ方や色選びなど、一から考え出したというものが少なくありません。「より良いものをつくりたい」という店主のおもいが周りの人たちにも伝わって、完成したものは世界でたったひとつの生地。
今回は、メルマガ2〜4号で特集した「しじらのはなし」に続いて「グランデ(※)」の誕生秘話をお伝えします。
北極しろくま堂の扱う生地には、糸の紡ぎ方や色選びなど、一から考え出したというものが少なくありません。「より良いものをつくりたい」という店主のおもいが周りの人たちにも伝わって、完成したものは世界でたったひとつの生地。
今回は、メルマガ2〜4号で特集した「しじらのはなし」に続いて「グランデ(※)」の誕生秘話をお伝えします。
織り上がりの感触を確かめる。手がすべてを覚えている
「グランデには、ほんとに苦労したね。」
北極しろくま堂編集部は、以前からお世話になってる老舗織物屋のご主人が語られたひとことが気になっていました。
そしてこの春。
「グランデの新色が織られ始めるそうだ」という連絡が入り、 どのような苦労のもとにグランデは誕生しているのかを取材しました。
向かったのは、織物産地で有名な遠州(静岡県浜松地域)の織物工場。北極しろくま堂がいつもお世話になっているところです。
08年7月から発売になった北極しろくま堂オリジナルの生地。3種類の織りパターンとたて糸6色の組み合わせが、光の反射によって十色近いグラデーションを生み出しています。いかにも「凝っているな」というこの生地は、世界でただひとつのものです。
まずグランデの特徴は、その織りの複雑さにあります。この生地には「平織り」「朱子(しゅす)織り」「サッカー」の3種類が使われています。
写真の左から、平織り、朱子織り、サッカー、朱子織り、平織り、朱子織りと続きます。
たて糸1本と、よこ糸1本とが交互に交差して織られた生地。もっとも単純な織り方で多用されている。
たて糸あるいはよこ糸のいづれか一方が表面に多く浮き出している組織で、光沢のある、なめらかな生地になる。サテンという別名のほうが一般的。
こう簡単に書きましたが、ひとつの生地に3種類の織りが入るというのは、世界でも大変珍しく、高度な技術を求められるのだそうです。
ご主人 この間、遠州の同業者の集まりがあってな、この織りをやってみたいか?と聞いたら、だーれもやりたくねえって。
編集部 それでも、チャレンジしてくださったのは?
ご主人 やっぱ、人がやりたくねーことに挑戦したい、って気持ちはあるんだけんね。
一般的な織りの組織図
グランデの織りの組織図
ご主人 生地を織るにも組織図というのがあって、こっちが普通の織りの図。簡単な説明で伝わる。だけど、このグランデは詳しい組織図が必要なんだよ。それだけこの生地が複雑で、糸の密度が高いということなんだ。
グランデのたて糸
編集部 ものすごい糸の数ですね。しかも、織り方がかなり複雑そう。
ご主人 普通の生地が1日で織れるところを、この生地は1日半かかるんだよ。
織機の奥には、糸を巻いた大きなドラムが2本。通常の生地は1本ですむのですが、このグランデはサッカー部分をつくるために2本必要といいます。
ご主人 このドラムに糸を巻く作業も大変なんだ。整経屋っていう別の業者さんがやってくれるだけんど、普通は糸を巻くのに1日ですむところを、これは5日もかかるって。このドラムがうちの工場について、細い鍵棒を1本1本かけていって、織機に全部をおりつけ(セッティング)したときには、ほっとするねぇ。
次に配色を担当した人を訪ねました。
担当者 グランデの最初の色合いは赤系でしたから、次は違う色を考えました。今の北極しろくま堂のラインナップにない色で元気の出る色を探しました。そこで見つけたのが黄色だったのです。
編集部 苦労した点は?
担当者 生地はたて糸とよこ糸の組み合わせによって織られるのですが、その特性上、プリント生地と違って、たて糸とよこ糸の色がお互いに影響を与え合うので、なかなか思った色に仕上がらないんです。色選びといっても、色見本が500色以上もあり、そこからたて糸、よこ糸の組み合わせで生まれる色となると何万色にもなります。
また、この生地は同じパターンで色を繰り返すわけではありませんから、スリングに必要な幅105センチの世界に、どうやって心地よい、見た目にもきれいな色のリズムをつけていくか、とても悩みました。
編集部 そこへさらに3種類の織り方がからんでくるわけですよね。
担当者 そうです。どういう順序でならべ、どの色を乗せていけば一番よいか。実際に身に付けた姿も想像して、どの色をどこへもってきたら一番きれいに見えるか、というところにも時間をかけました。
500色の中から選ばれた6色の糸。数万通りの中から決められた、たったひとつの色パターン。普段の5倍かかる糸巻き作業と、そのセッティング。「すごい」という言葉しか見当たらないプロの仕事が連なって、今ここに大きな音を立てながら北極しろくま堂オリジナル生地、グランデが織られはじめました。
あれから5週間。縫製を経て出来上がった北極しろくま堂オリジナル「グランデ・パステル・イエロー」
夏の青空に映えて、ここに誕生です。